福祉住環境コーディネーター協会とは、東京商工会議所、NPO法人「生活・福祉環境づくり21」などの関連団体の支援により、
福祉住環境コーディネーター検定試験の合格者が、真に役立つ人材として認知され、活躍できる状況を目指し、
相互連携、個々のスキルアップ、情報の収集・発信等を行うため、平成14年5月に設立された団体です。
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福祉住環境
コーディネーター協会
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 −特集− 平成21年度FJC協会総会(1)
 福祉住環境に関するお役立ち情報コーナーです。
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総会の様子

平成21年度FJC協会総会にて、当協会理事の備酒伸彦氏から講演をいただきました。次いで、浜田きよ子氏をコーディネーターに、松尾清美氏、金沢善智氏、松橋雅子氏から「住まい方・暮らし方・支え方とFJCの役割」をテーマに、それぞれメッセージをいただき、その後フリートークをしていただきました。


「在宅生活を支えるための地域ケア」
- 神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 准教授 備酒 伸彦 氏

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備酒 伸彦 氏

私は理学療法士で今から24年前に老人病院に就職しました。このころの老人病院には40人部屋があり、全員ほぼ寝たきりです。ふとんをまるめてよりかかって食事をし、その横でカーテンもひかずにおむつ交換をしていました。まったく技術のない私のような新人が入って、1ヵ月で入院者の半分が歩きました。私の技術ではなく、歩ける人が寝かされていたのです。これがごく当たり前の姿だったのです。

その後、兵庫県の但馬で高齢者介護の仕事に携わり、11年仕事をしました。過疎化と高齢化の進むこの地域で、スーパー高齢者、元気な高齢者、やや体力に不安がある高齢者、明らかに障害がある高齢者…いろいろな高齢者の方に毎日お会いしたことが、非常にいい経験になりました。というのも、もしも病院しか知らなければ、「入院中の障害や病気をもつ高齢者=高齢者」という偏った思い込みが生まれていたかもしれません。我が国のケアがうまくいかない理由は、この辺の偏った認識にあるのかもしれません。

1.FJCを取り巻く情勢の変化

人口動態や疾病構造の変化がもたらすもの

では、はじめに人口動態と疾病構造の変化について触れておきます。今後、2025年にかけて後期高齢者の急増により、入院患者の高齢化がさらに進むことが予想されます。同時に神経系疾患、呼吸器系疾患、損傷・中毒での入院患者の増加が予測されます。今の回復期リハビリテーションは6〜7割が整形疾患によるものですが、10数年前はほとんど脳卒中でした。疾病構造はどんどん変化しますから、当然、退院後の適した住環境も変わるはずで、こうしたことから今後の課題が見えてくるということにも目を向けてください。

今後、後期高齢者の増加により入院ニーズが増加するにもかかわらず、国は病床を削減する傾向にあります。その受け皿となるべき特別養護老人ホームなどの重度の介護まで対応可能な高齢者施設はもう増えません。入院ニーズの増加分および療養病床の削減分に対して、多様な高齢者の住まいでどこまで対応できるかが課題となっています。なかでも最近、高齢者専用賃貸住宅が注目されていますが、現状では重度の介護までの対応は難しく、その設備設計・サービスともに開発途上です。ケアハウスやグループホームなども同様で、こういった分野でも建築設計やサービス面でFJCのアプローチが生きてくるのではないでしょうか。

自宅で受ける医療ケアへのニーズが高まる

今後20年で外来患者に占める高齢者の割合は75歳以上で倍増、80歳以上は3倍増、かつ外来患者の4分の1は高齢者が占めます。しかし、入院患者に占める高齢者の4割強に比べるとその割合は低いのです。その原因は在宅の高齢者が病院にアクセスできないからです。さらに、年間死亡者数と病床数の推移を比較してみると、2039年には死亡者数166万人に対して病床数120万床となり、病院のベッド数が足りません。病院へのアクセスの困難性や病床不足から、在宅での医療ケアへのニーズが高まることが予測されます。

また、外来患者の総数は横ばいなのに対し、クリニックは年間1,400件増えています。つまり、1クリニックあたりの患者が減っているという現状があり、今後、クリニックは増加する在宅での医療ニーズにこたえるための工夫を迫られるでしょう。

こういった状況の中で、医療と住環境をどう組み合わせていくのか、そこにFJCの活躍の場があるはずで、新たなビジネスモデルを作っていくのもFJCの役割ではないでしょうか。このような医療・看護・介護にかかわる情勢を知ることも重要です。

2.FJCがなすべきこと

ではここからは、FJCが何をすべきか、また、どういったポイントに気をつければよいか、お話しましょう。

コーディネーターの仕事はコーディネートすること



建前と本音

なんといってもFJCはコーディネーターですから、コーディネートをしてください。コーディネートとは「他者を認めて頼ること」です。よく医者とホームヘルパーと理学療法士の関係からご説明するのですが、なかなかお互いに認め合ってチームワークを進めるのは大変です。

うまくいかないのは他人のせい、でも、変われるのは自分だけ

ある自治体で様々な職種の地域ケア関係者80人に対して研修を行った最後に、「今のケアがうまくいっていない理由は何か」アンケートをとりました。すると、「ほかの職種が悪い」という答えがいちばん多く、次は「行政が悪い」「制度が悪い」「利用者が悪い」と続き、一人だけ「自分が悪い」という結果でした。しかし、変われるのは「自分」だけです。

プライドとメンツの違い

プライドは自分の能力に自信があって、責任をとる覚悟がある人が持っているものです。他者が自分の領域に入ってきたときに、その能力を見極めて問題なければ譲ることのできるのがプライドを持っている人です。一方、メンツは自分に能力も自信もない人のもので、自分の領域に入ってくる他者を受け入れることができません。

ここで、1つの事例をご紹介しましょう。10日前には起き上がることも座ることもできなかったこの女性が、ベッドに座って楽しそうに足浴しています。この方が起き上がっても大丈夫と判断したのは保健師です。起き上がれるようにリハビリしたのはボク、いいとこ取りしたのはホームヘルパーです(笑)。お互いがそれぞれの領域でメンツをかけて主張していると、この方は起き上がることはできません。関連専門職がお互いに認め合って譲り合いながらプライドを持って仕事をしたからこそ、いい結果が出せたわけで、それができていない場合には、コーディネーターが必要なのです。その交通整理をするのがFJCの最も重要な役割です。

手段と目的をとりちがえていないか?

また、ケースケアをよくするための手段としての記録が、記録を書くのが目的にすり替わっていることが、よくあります。世の中をよくするためのコーディネートが、自己実現のためのコーディネーターになっていませんか?

3.FJCにできること

では、FJCになにができるのか、ここからはそのお話です。

一人ひとりの生活を変えることができる

もう一つ事例をご紹介しましょう。40代の女性でほぼ寝たきり、介護は80代の母親が担っています。自力で移動ができず、母親の体力ではベッドから車いすへの移乗も困難な状態でしたが、リフトとスリングシートを使ってスムーズに移動ができるようになりました。この女性は数年ぶりにシートに自力で座って、鶴を折って楽しんでいました。母娘の気持がいっきに明るくなりました。こういうことがFJCにはできるということです。

世論を変えることができる

ここで、学生200人に対して高齢者の精神機能・身体機能・生活についてどう思うか、アンケートした結果をご紹介しましょう。20歳の学生の答えはなんと88%がネガティブなものでした。あまりにも偏った答えであるため、55歳から64歳の中高年の男女に同じことを聞いてみると、男性の答えはそう変わりませんでした。しかし、女性は断然ポジティブだったのです。中年の女性は介護の当事者になる可能性があり、興味を持って調べています。つまり、介護の現状を知っている人は、多少身体や精神が衰えても生活は安心だ、と言い出したのです。介護の現場に携わる人たちの具体的な作業一つ一つの積み重ねが、国民の気持ちに安心感をもたらし、世論を動かしているのです。我々は世の中を変えることができるのです。

世の中の変化にこたえるサービスへ〜北欧にみる新しいケア

時代の流れとともに、ケアの質も変化しました。傷を治すという生物レベルのケア、いわば涙にくれる灰色ケアから、豊かな生活の支援という人間レベルのケアに変わってきました。むしろ、こういう変化についていっていないのは、プロのほうなのです。

十数年前にこの変化に気づいて、北欧にでかけてヒントを得ているのですが、日本と北欧ではケアの質がまるで違います。食事がまず違う。子ヒツジのロースト、しっとりとした温野菜、ほくほくのじゃがいも、スモークサーモン、白身魚のフリッター、ザッハトルテの生クリーム添えをお好みで。ワインだってついています。嚥下食として完璧です。日本ではどうでしょうか。


北欧のデイケアセンターのメニュー

多くの場合は福祉や介護が特別なもので、自分が食べたいと思わない食事でも疑問に思わないのではないでしょうか。それでも日本でも、最近は工夫がされるようになってきました。あるケアハウスでは、普通食、ソフト食、スルー食、ペースト食の4種類をサービスしています。ちなみに普通食よりもペースト食のほうが具材が大きい。嚥下が悪い人は食塊形成ができないので、一回つぶしてまた形にして、ある程度大きくしたほうが飲み込めるからです。そして、なんといってもおいしい。これが大切です。

シーティング・ポジショニングで勝負が決まる「おいしいごはん」



北欧での食事の様子

座れなければ食事はできません。おいしい豊かなごはんはシーティングがしっかりしていなければありえません。日本では、そもそも正しく座位姿勢がとれるテーブルといすが整えられていません。背もたれと肘かけがあるいすとへそよりも少し高いテーブルで、できれば両手を前に出してもらえば、背筋が伸びてあごがひけ、誤嚥を防ぐことができます。デイサービスによくあるのは誤嚥誘発テーブルです。また、食事・嚥下に関するアセスメントのポイントは17項目はあります。日本ではそのうち、3項目しかみていません。まだやるべきことは山ほどあります。

それに、コミュニケーションの取り方も問題です。ある特別養護老人ホームの利用者の方に、ケアワーカーにカラオケを勧めるように焚きつけました。するとその方は「人前で恥をかかせるつもりか」と怒ったのです。ケアワーカーはひたすら謝ったからよかったのですが、ここで善意を理由に言い訳をしてはいけません。なぜ怒っているのか、相手の気持ちを考えることが大事です。

北欧のスタッフになぜレベルの高いサービスができるか

最後にまた、北欧のお話をします。見学に行ったグループホームのスタッフに、なぜ、ここまでレベルの高いスタッフに育てられるのか、聞いてみました。すると、そのリーダーは山の絵を描いて、「この山のここまで登ってきたと励まし、さらに上に昇るように働きかけるのが私の仕事です」というのです。感動しました。

これは、まさにいま、FJCが置かれている立場です。私たちは山を登ってここまで来ました。これからは、もっと上を目指して、さらに登るべき時代が来ています。

WE WIL TRY!
やってみないと変わりません。

備酒伸彦(びしゅ・のぶひこ)氏 プロフィール
1961年神戸市生まれ。1983年高知医療学院卒業、2004年神戸大学大学院医学系博士後期課程修了。広野高原病院、県立加古川病院、県立但馬長寿の郷勤務を経て、2005年から現職。理学療法士、保健学博士、「地域におけるケアマネジメント」などの論文発表とともに神戸市地域包括支援センター運営協議会委員等の公職を務める。

≪平成21年度FJC協会総会(2) :メッセージ・フリートーク≫

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