福祉住環境コーディネーター協会とは、東京商工会議所、NPO法人「生活・福祉環境づくり21」などの関連団体の支援により、
福祉住環境コーディネーター検定試験の合格者が、真に役立つ人材として認知され、活躍できる状況を目指し、
相互連携、個々のスキルアップ、情報の収集・発信等を行うため、平成14年5月に設立された団体です。
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福祉住環境
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 −特集− 平成19年度 FJC総会記念講演会(1)
 福祉住環境に関するお役立ち情報コーナーです。

平成19年度FJC協会総会にて、記念講演会が開催されました。今回は福祉・地域で活躍されているFJCの方に、FJCとしての活動などをお話いただきました。

「想像力」と「創造力」 - Universal Design Office ”Luana”代表 宮竹美絵子 氏

住環境・ハード面の整備の大切さ


宮竹 美絵子 氏

福祉住環境コーディネーター(以下、FJC)として仕事をするようになって、今までは出会う機会のなかった職種の方々と知り合うことができたり、自分とはまた別の視点から色々なご意見をうかがえることを嬉しく思いますし、そこからまた次に繋がっていくことや、たまに、別の仕事で思いがけない再会ができることも楽しみのひとつです。

実は今日も嬉しい再会がありまして、この後にお話される松尾清美さんは、私が車椅子で生活することになって、福岡県の飯塚市というところで、初めてひとり暮らしをしたアパートや職場の改修に携わってくださった方なんです。

その頃松尾さんは、飯塚市にある脊損センターに勤務されていて、改修後も色々と相談にのっていただいたり、車いすテニスの面白さを教えていただいたりと、本当にお世話になっていましたので、まさかこういう形で東京で再会できるとは思ってもいなかっただけにとても嬉しく感じています。

私は交通事故で受傷し車椅子を使うようになったのですが、10代の頃までは何の不自由もなく生活をしていましたので、それがたった一度の怪我のために、一瞬にして身体が動かなくなるという現実をそう簡単に受け入れられるはずもなく、一時は本当に立ち直れないほどのショックを受けました。

1年半の入院加療とリハビリを経て、ようやく自宅に戻れた頃、山口で入院していた病院の主治医から、「飯塚市でテニス大会をやっているから見てくれば?」 と言われ、大して興味もなかったんですが、しぶしぶ見に行きました。それは飯塚市で毎年行われている車椅子の国際テニス大会で、県外からも海外からもかなりの数の選手が来られます。 

皆それぞれ障害は違うでしょうが、テニス用車椅子に乗った選手や、立位の選手らが、日に焼けた筋肉隆々の上半身で颯爽(さっそう)とボールを追いかける姿は本当に格好良く、衝撃的でした。

夜のパーティでは、ハワイの選手がファイヤーダンスを披露してくれたり、それぞれの国の言葉が入り交ざる中、みんなが飲んで歌ってと、ホントに普通〜に楽しんでいる様子が、その頃の私にはとても意外で驚きました。

その数ヵ月後、脊損センターのソーシャルワーカーからの「仕事と家を探してやるけん、こっちへ出てこんね」という一言で、気が付けば私も飯塚市に住むことになり、その次の年のテニス大会にはごく自然に私も参加していました。

日常生活はというと、改修された民間のアパートで一人暮らしをしながら、車を運転して会社に通い、休みの日には友達と九州をあちこち遊びに行ったり、国内外問わず旅行をしたり、テニスをしたりと、自分でも不思議なぐらい普通に楽しく生活ができていたんですね。

この「普通に…」というのが、本来とても難しいことであり、大切なことなんです。

では「なぜ、そんなことができていたのかなあ」と改めて考えてみますと、ただ単純に、ハード面の整備をきちんとしていたからできていたんだ…ということに、この仕事をするようになってあらためて気が付きました。もちろん、友達や職場の方やご近所さん、親切なスーパーのおばさんなど、色々な方の協力もありましたけれど、まずは、一人で何でもできるように住環境の整備をしていたから、車椅子に乗っていてもごく普通に自立した生活ができていたし、それが自信となって生きてこられたんだと思います。

もう一つ自信に繋がったと思うのは、民間の企業でごく当たり前に仕事ができていたことだと思います。脊損センターのソーシャルワーカーの方による、実に手際よい配慮で、就職が決まったと同時に、職場の環境整備も順調に進んでいき、私のためのトイレが新設されました。

その時も松尾さんが職場に来てくださって指示を出されたのですが、便器の横には移乗や身支度がしやすいようにベンチが作られ、壁には扇風機が付き、手洗いは温水が出るようにしてありました。これは脊髄損傷の私が体温調節が取れないことへの配慮です。松尾さんも私と同じ障害をお持ちですし、たくさんの経験からその辺りのことは熟知されていましたし、会社側も大変協力的で、その後も駐車場に屋根を架けていただいたり、小さな暖房器具を近くに置いてくださったりと、本当に恵まれた環境で仕事をすることができました。

このように、住宅を整備すれば自立した生活ができますし、職場の環境を整えることで、障害を持った方も仕事ができます。レストランやホテルなどのユニバーサルデザイン化を進めることで、多くの方がもっともっと充実した楽しい生活を送ることができます。

障害を持っているから一般社会で生きにくいのではなくて、社会に、環境に、障害があるから生きにくい人が生まれるということだと思うんです。

その大事な住環境整備の分野に携われるFJCの仕事に、私はとてもやりがいを感じています。

元気になる家

つい最近まで関わっていた仕事で、ちょっと変った環境を取り入れようと思った住宅の話をしたいと思います。

現在4歳になる脳性麻痺の障害をもったお子さんのご両親から、家の新築を考えているが、子供のためにどんな家にすればいいか見当も付かないので考えてほしいというご依頼をいただきました。

そのお子さんはかなり重度の脳性麻痺による運動機能障害があります。嚥下障害もあるので口から食事を摂ることも、水を飲むこともできません。そのため常に鼻から胃までチューブを入れていて、1日に4回栄養剤を注入しています。現時点では発語も難しく、知能障害もみられます。

日中は母親による全介助で、会社から帰宅した父親がお風呂介助をされています。現在はまだ体重も10kgぐらいなので、今のところ何をするのも抱っこをしてできてはいるのですが、上肢、下肢とも筋力が弱く、自分の腕の力で母親に抱きつくことができないので、同じ10kgでもとても重く感じるんですね。「もうすでに腰が痛いんですよ」とお母さまが言っていらっしゃいました。自力でできることは、寝返りがなんとかできるのと、歩行器に座らせると足の指を使って、ちょっとずつ前へ進むことができます。

現時点では言葉は出ないのですが、楽しいときには天使のような笑顔で声を出して笑ってくれるし、何か興味を引くものを見つけると、一生懸命、動かしにくい手足を動かして、そこへ行こうと頑張っている姿を見ていて、「この子のために絶対にいい家をつくりたい!」と思い、お引き受けいたしました。

ただ非常に難しかったのは、現段階では将来の予測がとても立てにくいということでした。脳性麻痺というのは症状の出方が本当に人それぞれで、本なども色々読みましたが、本に載っていることとその子の状態も全く違いますし、お医者さんや理学療法士さんにお話をうかがっても、将来その子がどの程度まで回復するかもわからないし、反対に機能低下や二次障害が起こるかどうかもわからないと言われました。

だけど、わからないということは、良いほうに取れば今より良くなるかもしれないし、何と言ってもまだ4歳なので、これから吸収できることもあるかもしれない。

「どこまで良くなるかわからないなら、少しでもその子が元気になれるような家を作りたい」と思いました。

そこで、まず5つのコンセプトを決めました。

  1. 今の状態より少しでも運動能力、知的能力が高められるような家にしよう!
  2. 子供の成長と共に大変になっていく介助を、いかに楽しく、楽にできるかを考えよう!
  3. もし機能低下が起こったとしても対応できるような家にしておこう!
  4. 親の高齢化への配慮(たとえ親が車椅子の生活になっても、そのまま自宅で子供と一緒に過ごせる家にしよう!)
  5. 誰が遊びに来ても障害者住宅であると思わせないデザイン性と居住性の確保!

2の、『いかに楽しく楽に介助できるか!』については、今は10kgのお子さんなので、ほとんどのことは抱っこをしてできていますが、それが難しい時期に来たときに、やはりリフトがあるほうがご両親の負担も少ないということで、天井走行リフトの設置も考えました。

そこで、以前仕事で知り合った筋ジストロフィーの方から、ご自宅を新築された際に天井走行リフトをつけたという話を聞いていたので、施主様と一緒にそちらのお宅を見せていただいて、操作方法や使い勝手などをお聞きしました。また、今は中学生になる脳性麻痺のお子さんをお持ちだけど、自宅にリフトを付けていないと言われていた知り合いからは、どうやってお風呂に入れたり、トイレをさせているかなど色々教えていただきました。

それらのことも踏まえて、とりあえずここ何年かはリフトに乗せるより抱えたほうが早いからと、設置してもあまり使わないかもしれない。もっと体重が重くなって必要に迫られるとしても10年先だろう。こういう機器はどんどん進化していくので、10年先にはもっといいリフトもできているかもしれない。初期費用やランニングコストのことも考慮して、とりあえず今は設置せず、将来的に適切に付けられるような間取りを考えて、必要な部分の強度はしっかり取っておこうということにしました。

3の『機能の低下が起きても対応できるように!』や、4の『親の高齢化への配慮』については、キッチンや洗面台などの設備機器を、親が車椅子になっても問題なく利用できるようなデザインで造作することにしました。浴室は将来、家族やヘルパーさんなど二人で介助することも想定した形にしてあります。洗面所には着替えをさせるための折畳みベッドがあり、普段は壁面に収まるようになっています。

それと、呼吸器官も弱いですし、体温調節も取りにくいので、きれいな空気を保てるよう自然素材の利用や温度、湿度などにも配慮して、感染症を起こしにくい家にしたいと思っています。

それから、5の『デザイン性と居住性』。これはとかく後回しにされがちなところですが、私はとても大事なことだと思っています。

新築であっても改修であっても、「手摺さえ付いていればいい」とか「段差さえ解消してあればいい」というものではないと思うんです。

例えば、お嫁さんがいつも家をきれいに大事にされていて、そのお気に入りの玄関に、おじいちゃんやおばあちゃんのためとはいえ、介護保険で借りられるという理由だけで、無骨で景観を損(そこ)ねるような段差解消機を取り付けた時に、ご家族が家に帰ってきて玄関のドアを開けるたびに、その機能面だけで決めた段差解消機を見て、ふぅーっとため息をつくようであれば、その改修は all OK!なのかな?と思うんです。

どんなに障害の重い方の家でも、そこは病院でも施設でもなく、家族みんなの家です。本人だけではなく他の家族にも、遊びに来られたお客様にも、違和感を感じさせない美しい家にすることが大切だし、真剣に考えれば必ず方法はあると思います。

残念ながら、今ある福祉機器にはデザイン性に長けているものが少ないですし、あれこれ選べるほどの種類もありません。もし既製品の設備機器や福祉機器に気に入ったものが無ければ、造作できる部分がないか検討するとか、造作が難しいものであれば、表に出したくない部分を、普段は隠しておけるように工夫をすることも必要だと思います。

ちなみに今の私の家には既製品の福祉機器は1つもないんですね。自分でデザインしたものを自然素材で全て造作していただいたので、トイレもお風呂も違和感がなくとても快適です。

運動能力と知的能力の向上『スヌーズレン』

今回、この家の目玉として考えたのが、1の『運動能力・知的能力の向上』です。

みなさん、スヌーズレンってご存知でしょうか?

これはオランダ語で「クンクン匂いを嗅ぐ」という意味の『スヌッフレン』と、「うとうとする」という意味の『ドゥーズレン』という言葉を合わせた造語です。

どのようにして始まったかというと、今から30年ぐらい前にオランダの重度知的障害者施設で考え出されたもので、どのような教育をすれば子供達が楽しく成長でき、知的発達を促せるのか? またその方法が、健常者が考えた一方的に押し付ける教育やリハビリではなく、各々の嗜好や権利を大切にしたケアとしてできないか?…というところから試行錯誤が重ねられて発達していったものです。

その後ヨーロッパ、主にスウェーデンなど北欧を中心に、アメリカ、アジアなど30カ国以上に広がっています。日本にも17年ぐらい前に入ってきて、主に福祉施設などで設置されるようになってきたのですが、ヨーロッパでは、知的障害者、認知症の高齢者や精神障害者、身体障害者だけでなく、ストレスを抱えてリラックスを求めている健常者にも効果があることがわかってきて、一般病棟やリハビリ施設、デイケア、ホスピス、コミュニティセンター、一般の幼稚園、小中学校にも設置されるようになってきています。

どういうものかと言うと、人間が生まれ持っている基本的な能力である、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚と、それに携わる運動感覚とか認知感覚を養うために、いろんな方法を使って、適度な刺激を受けられるような環境を設定し、リラックスをしながらも必要とする感覚を磨いていこうとする空間のことを『スヌーズレン』と言います。

通常、私達は生まれながらにして体中の感覚が自然に成長していきます。赤ちゃんは嗅覚を使って母親のお乳の場所を探し当てて吸うことができるし、顔の上で鳴っているオルゴールを聞きながら、その回転するおもちゃを目で追って、そのうち手を伸ばして感触を確かめることができます。もっと大きくなってブランコに乗るようになれば、落ちないように頭で重心を取りながら、手の力加減で揺れに対して力を調整します。そうやって、それぞれの部位で受けた感覚を統合して、体の次の動きに伝えることができます。

でも、何らかの感覚障害を持っている人達は、普段の生活で受ける刺激だけでは必要な感覚が身に付かなかったり、たくさんの情報や刺激の中から自分に必要なものだけを選び取ることも難しいので、照明や音楽、匂いなどを使って人工的に心地いい刺激を受けられる環境を作っておいて、その刺激を体中の感覚に働きかけ、感覚の統合とリラクゼーションをしようというのがスヌーズレンの目的です。

スヌーズレンの代表的な部屋『ホワイトルーム』と『アクティビティルーム』 

写真で見ていただくと、こんな感じです。

写真: ←「ホワイトルーム」の一角 丸い筒が「バブルユニット」

これは、スヌーズレンの代表的な部屋で『ホワイトルーム』と言います。

全体的に白っぽい空間の中、照明を少し暗くして、季節に合わせて水温を調節したウォーターベッドやビーズクッションなどに寝転んでリラックスします。

このキラキラしているのは「バブルユニット」です。透明の丸い筒の中に水が入っていて、下から泡がぶくぶくと浮かんできます。下からライトも照らされ、色が変わっていきます。その様子をぼんやり眺めたり、ぼこんぼこんという泡の生まれる音を楽しんだり、これに抱きついて振動を楽しむ子もいます。

写真: 写真:
左:ミラーボール 右:ピクチャーディスク

天井近くの壁にはミラーボールが回っていて、壁に映るくるくる回る光を楽しんだり、プロジェクターに円盤のカセットを設置して投影することで、このように絵がゆっくり回るのを眺めたりして過ごします。こういう絵の他にもいろんな色の液体が混ざっていくものや、星空とか動物とか数十種類のカセットディスクがあります。

写真: 「サイドグロー」

こちらは「サイドグロー」と言って、透明のチューブに入った光ファイバーの束です。いろんな色に光りますが表面は熱くならないので、これを身体に巻きつけたり、その上に寝転んだり、みんな思い思いに楽しまれるそうです。

写真: 写真:
左:「モビール」 右:「センサーボード」

他にも揺れる「モビール」を天井からぶら下げてあったり、壁面には触ると点灯する「センサーボード」や、つるつるしたもの、ザラザラしたものが貼り付けてあり、それぞれの触感を楽しんだり、アロマオイルや芳香剤で匂いを楽しんだりもできます。

ホワイトルームの他に『アクティビティールーム』というのがあって、代表的なものがこのボールプールです。よくデパートのキッズコーナーでも見かけますよね。このボールプールの中に入って、ボールの感触を楽しんだり、身体をもぞもぞっと動かすことで埋もれていくという感覚を楽しんだりもできます。

スヌーズレンとの出会いとそれを取り入れた理由

私がスヌーズレンのことを知ったのは、2年ほど前に、発達障害児や重度心身障害児の学童保育やデイケアをしている山口市のある団体から、その施設にスヌーズレンを作ろうという企画が持ち上がったときに、その環境づくりを手伝ってほしいと言われて参加したことがあって、その時初めてスヌーズレンの存在や感覚統合という言葉を知りました。

日本ではまだ主に施設の中でしか行われていないスヌーズレンを、今回なぜ、住宅に取り入れようと思ったかと言うと、施主様から新築のプロデュース依頼を受けてから半年間、その脳性麻痺の子が普段どんな生活をしていて、何が好きなのか、どんなことに興味を示すのか、どれぐらい動けて、どんなことが苦手なのかなど色々知りたくて、とにかくその子が通っているリハビリやリトミック教室など、あちこちへ付いて回りました。

最初に見学したリハビリでは、自ら動くということも少なく、表情も乏しくて、やはり本当に全介助による生活しか無理なのかなと思いました。でもその後、一番喜んで通っているというリトミック教室を見学したときに、先生の歌やピアノの音に合わせて、なかなか思い通りに動かない身体を、一生懸命動かして太鼓や木琴を叩いていたんです。ギターの弦にも指や爪を引っ掛けるようにして音を鳴らしたり、色々なことをきちんと自分の意思でするんです。

その教室では、赤や緑の箱の中に同じ色の積み木を入れるというような勉強の時間もあったのですが、その時も正確に色を識別して手を動かすことができるということもわかりましたし、興味のあるものには自分から歩み寄ろうとしていることもわかりました。

今のところ言葉は発しないですし、微妙な表情の変化を読み取るのが難しいことも多いのですが、本当にうれしい時はキャッキャッと声をあげて笑うし、嫌なことは全身で表現します。

そういう場面を見ていくうちに、「この子はまだまだたくさんの可能性を秘めているかもしれない」…と、嬉しくなりました。

もっともっと五感を刺激していけば、今より更に表情が豊かになるかもしれないし、運動機能も高まるかもしれない。言語まではいかなくても「イエス」「ノー」くらいの反応はできるようになるかもしれない。「じゃあどうしたら…!?」と考えていたときに『スヌーズレン』と結びついて、「これは使えるかもしれない!」と思いました。

それに、この子の場合、決して子供のうちだけ必要なものではなく、一生にわたって利用できるものだし、折角新築するのだから、自宅にスヌーズレンルームを設置すれば、わざわざスヌーズレンのある施設に連れて行かなくても、いつでも好きなときに思う存分家族で楽しむことができます。

本来スヌーズレンというのは、本人だけをポンとその部屋に置いておくのではなく、家族や身近な人と一緒に同じ空間を楽しみ、刺激を受けたりリラックスしたりするもので、それによってまた新しい反応に気付けたり、コミュニケーションをはかれるというのも大事な要素のひとつなので、家族にとっても自宅に作ることは有効だと思いました。

そこで、施主様に提案したところ、施主様も興味を示されたので、早速、スヌーズレンを設置してある施設二ヶ所へ体験しに行きました。そしてその子をウォーターベッドに寝かせた瞬間、これまで私が聞いた中では一番大きな声で笑ったんです。試しに、私達もみんな寝っ転がってみたのですが、暖かくてぼにょぼにょと水の音がして、小船に揺られているような、何ともいえない感覚で本当に気持ちいいんですよ。バブルユニットやボールプールにも興味を示してくれたので、具体的にスヌーズレンを採用したプランを練ることにしました。

ただ一つ問題がありまして、既製のスヌーズレングッズはかなり高価なんです。数万円するものや、物によっては20万円ぐらいするものもあります。全てを揃えようとすると、とんでもない金額になってしまうので、なるべく、正規の外国製のスヌーズレングッズで揃えるのではなく、インテリアショップで似たようなグッズを探したり、店舗設計で使う建材などを使って造作しようということになりました。

誤解のないように申し上げますが、スヌーズレンはあくまでも刺激やリラクゼーションを、家族や介護スタッフらと楽しむ空間であって、治療や訓練、学習、教育のプログラムではないので、利用効果を追求するものではありません。

それでも、実際に、それまでになかった表情や反応が見られたり、発達障害や多動の子が落ち着きを取り戻したり、認知症の進行速度を遅らせるという報告もされています。年齢や障害に関係なく一生利用できるものとして、その可能性にかけてみたいと思いました。

想像力と創造力

家作りには『想像力』が必要です。

この家に住む人にとって何が必要で、何を不快に感じるか。「不便」なことだけではなく、「不快」に感じることは何か。最期の時まで人間らしく尊厳を持って、楽しく生きるためにはどんな工夫が必要か。もしこのクライアントの家が自分の家だと想像したときに、健康な身体の状態であっても、この家に住みたいと思えるデザインなのか。また、自分の身体がままならなくなったときにも住み続けたいと思える家なのか…ということを考えなくてはいけないと思っています。

そして、それを『創造する力』。

既製のものにとらわれず、良いものがなければ造作するとか、元々は別の用途のものでも、それをうまく応用する力も必要だと思うのです。

これは、住宅に限らず、ホテルやパブリックトイレなどにも必要で、「ここを利用する人が、どういう方法で使うのだろう」とか、「どんな気持ちで利用するだろう」まで考えて、創造してほしいなと願っています。

私達FJCは、カタログに載っているものや、低価格で借りられるということだけで選ぶのではなく、クライアントが本当に必要としているものや快適なものを探し出して提案するのが仕事だと思うし、もしも気になることや不便なものなどを見つけたときは、公の機関に話をしてみるぐらい積極性があってもいいと思っています。

私達の提案いかんで、クライアントの今後の生活の豊かさが変わってくるかもしれないって、すごい仕事ですよね?

そんな大事な仕事に携われることに誇りと責任を持って、これからも頑張っていきたいと思っています。

宮竹 美絵子 氏 プロフィール
[山口・交通事故で脊髄を損傷後、車いすユーザーとなる。建築設計事務所勤務を経て、2005年より現職。公共建築物や一般住宅のユニバーサルデザイン(UD)コンサルティング、多目的トイレの設計、UD関連講座の講師、ピアカウンセリングで活躍中。1級福祉住環境コーディネーター・インテリアコーディネーター・山口県福祉のまちづくり条例設計マニュアル改訂委員会委員・山口県社会福祉審議会委員]

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