福祉住環境コーディネーター協会とは、東京商工会議所、NPO法人「生活・福祉環境づくり21」などの関連団体の支援により、
福祉住環境コーディネーター検定試験の合格者が、真に役立つ人材として認知され、活躍できる状況を目指し、
相互連携、個々のスキルアップ、情報の収集・発信等を行うため、平成14年5月に設立された団体です。
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福祉住環境
コーディネーター協会
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 −特集− FJC総会記念講演会 <2>
 福祉住環境に関するお役立ち情報コーナーです。

去る5月18日(木)FJC協会総会にて、記念講演会が開催されました。
今回は、福祉・地域で活躍されているFJCの方に、FJC活動を始めたきっかけ、現在の活動などをお話いただきました。

 
<1>私のFJC活動
   北秋田市 財団法人たかのす福祉公社 理事長 松橋 雅子氏 
<2>地方都市の高齢者介護―団塊の世代の思い
   社会福祉法人はぴねす福祉会 理事長 長野文彦氏
地方都市の高齢者介護―団塊の世代の思い
     −社会福祉法人はぴねす福祉会 理事長 長野文彦氏−
 
たった1人から400人規模の組織になるまで
長野 文彦氏
長野 文彦氏

今日、私は愛媛県の新居浜と言うところから来ました。人口が12万7000人、県庁所在地に次ぐ第2の都市で典型的な地方都市です。高齢化率も約22〜23%。今後20年で9万5000人、50年経てば6万5000人になるという宿命を背負った地方都市です。

20年も前のことですが、全国で初めて民間で、今で言う「在宅複合型施設」というのを私の会社で興したことがあるんです。その時に、「ショートステイ」「デイサービス」「カルチャークラブ」今で言う「在宅介護支援センター」の様な「介護の相談所」といったものを併設しました。
全国から沢山の方が見学に来られました。議員の先生も沢山いらっしゃった。だけど、お客さんが来なかった。1年半で閉めました。当時のお金で特養が一つ出来る位の投資をしまして、今も未だ1億数千万円の借金を抱えて返済しております。

一番初めに手がけたのが、豊園荘という施設でした。ここは、周りにゴルフ場や大きな池があるようなところです。このロケーションはアカンと思いました。
次に造ったのが市役所の近く、いわゆる市街地です。私は市街地に施設を造る様心がけました。もともと、高齢者の福祉事業をしようと思ってやった人間ではありません。街づくりの一環でやりました。自分の故郷の足らない部分を足そうと思ってやろうとしたことの一つが福祉事業だったのです。

この時、13万人の人口のところに、特養のベッドが190しか無かったんです。

20年ほど前に、福祉事業をやろうと思ったとき、協会の理事でもある樋口恵子先生の講演を聞いたんですが、「これからの高齢化社会の介護というのは、家庭ではなく社会の責任で高齢者のお世話をするんだ」とおっしゃった。その言葉が私の気持ちに火をつけたんです。樋口先生の講演を聞いて、一人で始めた事業は、現在、直接的な雇用が400人位の組織になっております。

スーパー跡地を日本初の合築施設へ

ここで、3年ほど前に作った若水館という施設の話を紹介します。
ここは新居浜市でただ一つ残っているアーケード商店街に面していまして、1300坪の土地に地下1階、地上5階のスーパーマーケットがあったんです。そのスーパーが撤退した後5年ほど、街の中に巨大な軍艦のような建物が放置されました。多くの方から、この跡地を活用した介護事業を薦められました。

この時、一度は断念したんですが、私の82歳になる母親が「あんたいっぺんやってみなさい。」と言われ、30億円つぎこみました。勿論、補助金も十分に頂きました。

この施設の地下は、以前は、生鮮食料品売り場でしたが、今は、100数十台入る職員の駐車場になっています。4階に27床のグループホーム、1階にデイサービスセンター、2階が80床あまりの特養、3階と4階の一部が老健施設、これは日本で初めての合築施設です。当時、一つの建物の中に、福祉と医療の施設を合築したものは前例がありませんでした。厚生労働省も、「いい話だけど合築は難しい。階段を降りて老健から特養に行くと言うのは、難しい」と言われました。一生懸命探したら、沖縄に1件あったんです。結局、再度厚生労働省に掛け合い、OKを貰いました。

福祉事業と責任

実は、私はこんな考え方でいるんです。
昨年の10月、今年の4月、またこれからも介護保険制度が変わります。色々変わって皆さんバタバタしている。日本の高齢者にかかわる社会福祉事業の最終着地地点と言うのは、分かっているはずなんです。だけど一発で着地点にいくわけにはいかないから、段階を踏んでいるんだと。最終の着地点を示すべきだと。

前段の挨拶でもお話しましたが、私はビジネスとしての介護事業もやりました。今、社会福祉法人としての福祉事業もしています。両方経験しています。経営や理念は全く違います。建築関係の若い人でも、「今度、福祉をやろうと思います」と言う方がいます。福祉ではなく、商売・ビジネスだろうという話をします。最近のデイサービスは、お迎えをして、食事をして、お風呂に入って、これは水商売ではないかと。怒らないでください。安易に参画する方が多いということなんです。介護ビジネスと福祉事業は全く違うのです。

まばらなニーズに対してでも、泣きもってでもやらなければならないのが福祉事業です。私が20年も前に、ビジネスでしたから「あかんわ」と1年半で閉めました。大変な借金を背負いました。でも撤退できました。だけど、地域に根付いた福祉事業というのはやめられんのです。その為の責任も抱えおるんです。

地方都市で増える低所得者階層

ここでプラチナガーデンという施設の話をします。ちょうど6月1日で1周年を迎える在宅複合型施設です。2600坪の土地に、ケアハウスというものを騙った高齢者住宅をつくりました。

「騙った」と言うのが意味深なんです。1人部屋が40平米、2人部屋が80平米です。1人部屋の特徴は、寝室と水周りが直接繋がっている、Aタイプは完全な北欧スタイルです。玄関は入ってすぐにキッチンです。すぐ中庭にも出れるようになっています。ずいぶん人気があり、昨年の6月1日と2日の2日間で3000人が見学に訪れました。
正面から見ても看板なんかはありません。地域の福祉事業ということは皆知っているんです。ケアハウスの廊下は衛生上、タイルを貼りました。天井は倹約して訳ではありませんが、電気がありません。明るいとところと暗いところがあって、用事がある時に、明るい所行くと言うのが家庭の住まいです。
レストランは150席です。一膳飯ではありません。きちんと食事の取れる人は、漬物から始まって汁物、希望によってうどんやそばも出ます。大体400円前後です。
東京の方にいうと、3000万円から4000万円の入居一時金を頂く施設のグレードだと。

しかし、それでは、田舎の人は誰も入らない。
なんとか、入居一時金を用意しても月々の20万以上のお金は用意できない。高額な有料老人ホームというのは、人口の大きなボリュームのある中で、一部の数パーセントの方の為のものだというのが僕の結論です。

この前、年金の計算をしてもらったんですけど、僕の場合14万円なんですよ。地方にはそれにプラスする企業年金を準備している会社なんてあんまり無いんです。国民年金が5万ちょっと、企業にずーと勤めて六十何年かたって、14万円弱しか年金をくれない。
都会はいざしらず、地方都市というのは、今後ますます団塊の世代に続く高齢者というのは低所得者階層です。今の介護保険というのは、現状の手厚い年金に守られている年代の方しか使えないと思っています。政府の方や先生方には、高齢者福祉の着地点を早く示して欲しい。都会より田舎のほうが深刻なんです。

今までの65歳以上と言うのはマイノリティだったんです。もうすぐ、高齢者は団塊の世代を含めて、マジョリティになるんです。財政の関係からいってこうなることは分かっていた。早く、私の故郷に社会資本として残る施設を作っておかないと大変なことになる。この一念でやってきました。

20年後も支持される施設作り

今、地方の自治体が困っていることは何だと思いますか?
40年代、50年代に各地方公共団体がつくった公営住宅、県営住宅をどうしようかということです。皆さんどうしたらよいと思いますか。コンバージョン?リニューアル?スクラップ&ビルドがいいと思いますか?
ここの部分を皆さんが地元の公共団体で結論を出せば、都会も勿論、田舎は生活が変わるんです。今までの4階建ての市営住宅ではエレベーターは付かない。だけど技術革新で簡単に外付けが出来る時代です。そして一棟壊すと何万と出てくる廃ゴミを出さないように、リニューアル。皆さんの手で提案をするんです。

時間があまり無くって来ましたので、建設計画作成段階の留意点を簡単に説明します。

  1. 施設が地域に向けて開かれていること
  2. 建物が地域に馴染むこと
  3. 内装、インテリアが現役世代に受け入れられること
  4. 計画の初期段階からプランを建築士に任せないこと
  5. 料金設定を地域の所得水準にマッチさせること
  6. プランに革新性があること

まず、施設が自己完結型にならないということ。山の中でもお金さえ掛ければそれなりの建物は出来る。その施設と地域が自然な交流が出来ているかということです。日常の生活の中で普通に人の行き来があるか。ボランティアの人が踊りを見せましょう、歌を聞かせましょう、というのは日常のことではないんです。だけど今まではそれを普通に有難がってきたけど、もうそんな時代ではないんです。
今、高齢者といわれている方々と予備軍の団塊世代の私たちでは、まるで違う世界で生きてきたような違いがあるんです。この人たちに対応する、20年先も支持される施設を作らなければならない。というのが私たちの願いです。

生活スタイルに合った住居の提供を

私どものケアハウスは60人の定員があっという間に埋まりました。その時の決定者は、私の同年代の入居者のご子息、お嬢さんでした。素材や色彩に注意したことも良かったと思います。
しかし、ケアハウスの、集合住宅の一番のポイントは暮らし向きの似通った方が集まるといったことです。良い施設と言うのは、介護が良いのは当たり前です。話題になる最新型の特養、老健の職員に、自分の老後にこの施設に入りたいかと聞くと、誰も手を上げません。これは、必要とされていているのは介護の良さだけではないということです。居住環境であり、建物のセンスです。自分の暮らしにフィットした建物かどうかと言うことです。

高齢者住宅を建築士に依頼する時には、施主は要望ははっきり伝えないといけません。羊羹を縦に切ってきたようなプランを出してくるような建築士とお付き合いをしても仕方がない。こういう時代であれば、建築関係の皆さんも施主の私たち以上に勉強していけなければならないと思います。まだ足りない、他の話題になった施設のマネが多く、革新性が無い。

地方都市では、都会と比べ所得水準が低いんです。高齢者住宅を提供するときには所得水準にマッチしたものを提供しないとダメなんです。私たちの隣の松山市には全国規模の大手の有料老人ホームがありますが、悪戦苦闘しております。最近では入居一時金を100万から50万に下げたりするチェーンもありますが、それでも地方では生活と支払い金額とはマッチしないんです。これが地方の宿命なんです。

個室ユニット型だけが本当にオールマイティなのか

最後に私の悩みを聞いてください。
今、療養施設の主流は、個室ユニット型といわれます。個室ユニットがオールマイティのようにいわれますが、果たしてそうなんでしょうか。特養の介護度4とか5の人を個室に入れろというのでしょうか。私の83歳になる母が入院しても個室には入れません。1週間でおかしくなると思います。院長に頼んでも多床室に入れてもらいます。
皆さんはどう思いますか。皆さんの手で、低料金でモラルの高い快適な多床室というのは考えられませんか。

 

長野 文彦氏 プロフィール
1947年生まれ。
長野グループ(有限会社長野ビル・株式会社長野酒店等)代表。
大阪大学経済学部卒業後、アサヒビール株式会社を経て、家業を継ぐ傍ら1990年から現職。「まちづくり」の視点を重視し、特養、老健各2施設を基幹に、ケアハウスなど多様な高齢者福祉事業を展開。2002年開設の高齢者保健福祉総合施設「若水館」は、大規模店舗(旧ニチイ)跡地を活用・開発し、特養・老健・デイサービス等を開始。現職員400名の雇用機会も創出、商店街再生・地域ケアの充実などの成果をあげ、高い評価を得ている。
 
≪FJC総会記念講演会 <1> :私のFJC活動≫

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