Mさん53歳女性。シャルコー・マリー・トゥース病(神経系の遺伝性疾患・筋肉の萎縮を引き起こす進行性の難病)のためほぼ全介助。屋外、屋内共に車いす利用。住いはかつて店舗だった部分を含む戸建て住宅。80歳の父親と二人暮し。
玄関が狭いために外出用の車いすを玄関の外に置く事しかできず、外出の際は室内用からの乗り換えに介助者におぶってもらわなければなりませんでした。新しい電動車いすの購入をきっかけに、“外出用車いすを玄関に置きたい”“介助者である父にいつまでも負担をかけられない”ということで、ご本人の仕事上以前からお付き合いのあった建築設計事務所に設計の依頼をされました。
バリアフリー設計を得意とする設計事務所と相談をしながら、ご本人・介助者双方のストレスを軽減するため、玄関だけでなく、毎日の生活に関わる家全体の車いすの移動スペースの確保を目的として改修することになりました。
※図面・写真はクリックすると大きいサイズで見れます。
既に使用していなかった道路に面した店舗スペースを新しい玄関に改修。道路からなだらかなスロープをつくり、玄関に入る。土間は車いすが回転できる広さを確保し、あがりかまちは車いすの座面の高さにあわせた。 脇には歩行用にワンステップ階段を設置。
2枚引き戸で廊下との段差が3cmあったが、廊下の床をリビングに合わせ、出入り口を3枚の引き込み戸に。段差を解消し間口を広げて、車いすの回転スペースを確保。
洗面室とトイレは独立していたが、車いすが通るスペース確保の為に壁をとりワンルームに。車いすの膝が入る洗面台の他に、洗濯機の横に作業用の流しを取りつけた。
新しい玄関ができたことで、以前玄関代わりに使っていたリビング角の掃き出し窓は使う必要がなくなった。そこで、カーテンをやめて内側に木製サッシを設けた。二重サッシにしたことで断熱効果も期待できる。
「よく廊下が狭いといいますが、廊下全体が幅広い必要はなく、どこで車いすを回転するかが問題です。」「建築の構造からすれば、2枚引き戸を3枚引き込み戸にすることや、床をあげて段差をなくすことは、そんなに大きな工事ではない。」と設計者。 「本当に通りやすくなった。」とMさん。 広くなった玄関はリビングとの境の3枚引き込み戸を開け放つと、開放的な空間が広がるようになった。 洗面室やトイレはワンルームになったので、入ってすぐの洗面化粧台の前で回転すれば、浴室の前まで車いすがつけられる。 二重サッシにした窓の外には花壇を作った。曇ガラスや障子を使用した二重サッシは、やわらかな光を取り入れられる上、断熱効果もあるので心地良い居場所ができた。